最高裁判所第三小法廷 平成4年(行ツ)39号 判決 1992年12月15日
上告人
学校法人奈良学園
右代表者理事
伊瀨敏郎
右訴訟代理人弁護士
木下肇
中本勝
土谷明
被上告人
奈良県地方労働委員会
右代表者会長
本家重忠
右補助参加人
奈良学園教職員組合
右代表者執行委員長
梅木春興
右当事者間の大阪高等裁判所平成二年(行コ)第二九号、第三八号不当労働行為救済命令に対する取消請求事件について、同裁判所が平成三年一一月二九日言い渡した判決に対し、上告人から一部破棄を求める旨の上告の申立てがあった。よって、当裁判所は次のとおり判決する。
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人木下肇、同中本勝、同土谷明の上告理由について
所論はその第三において、原審は被上告人の命令していない団体交渉義務まで上告人に負わせていると非難するが、原判決(その引用する第一審判決を含む)の判示するところは、「特定の組合員の配転は、組合員の労働条件その他の待遇に関するものであって、団体交渉の対象となるというべきであるから、補助参加人の右団交申入に対し、植田に対してなされた前記処分の撤回を含む人事の適正配置ないし人事に関することは団交の対象とは考えられないとして植田の配転につき団交を拒否した上告人の行為は、上告人の主張について判断するまでもなく、労組法七条二号に該当するものであり」、本件救済命令の主文一項前段記載の命令は適法である、というのであって、不当労働行為を理由とする処分撤回要求に対して交渉に応ずる義務があるとしたものでないことは、その説示全体を通じて明らかというべく、その趣旨は、本件救済命令の理由中における「植田に対する今後の処遇すなわち担当職務をどのようにするかについては学園(上告人)は誠実に団体交渉義務を果たすべきもの」とする説示自体からもうかがわれるところである。その他、所論の点に関する原審の判断は、原審の適法に確定した事実関係の下で、正当として是認することができ、その過程にも所論の違法は認められない。論旨は、独自の見解に立って原判決を論難するものであって、採用することができない。
よって、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 可部恒雄 裁判官 坂上壽夫 裁判官 貞家克己 裁判官 園部逸夫 裁判官 佐藤庄市郎)